2018.08.20
大腸がんのリスクとアルコールが関係するメカニズムは?
国立がんセンターの研究で、アルコールが大腸がんのリスクを高めるという研究結果がでています。
これは35歳以上の男女それぞれ約10万人を10年前後という長期間にわたって調査したデータです。
この研究結果によると1日のアルコール摂取量の平均が23グラムを超えると大腸・結腸・直腸のがんになりやすいとのことです。
このデータをさらに詳しく見ていきますと、大腸がんのリスクに関しては、「お酒を全く飲まない人たち」と「アルコール摂取量が1日あたり23グラム程度の人たち」を比べると、男女ともに大腸がんのリスクが約1.5倍にもなっているのです。
そして、1日あたりのアルコール摂取量が23グラムを超える人のデータを見ていきますと、その摂取量が15グラム増えるごとにリスクが約10パーセントずつ増えていくということがわかります。
さらに、男性の大腸がん患者さんの約25パーセントが、アルコールの大量摂取(1日あたり23グラム以上のアルコール摂取)が原因で大腸がんになったと考えられえるそうです。逆に言えば、アルコールの摂取量をちゃんと抑えていたら、その約25パーセントの患者さんたちは大腸がんを予防できた可能性があるのです。
この研究結果では、飲酒以外の大腸がんにかかる要因というものが多少は残ってはいるのですが、男女それぞれ10万人という母体数の大きさから考えると、アルコールが大腸がんに及ぼす影響というのは十分にその数字に表れていると考えていいでしょう。
実は、国立がんセンター以外の世界中の研究機関で大腸がんに限らないさまざまな病気とアルコールの関係についての研究が行われています。つまり、アルコールを飲みすぎると、どういう病気が増えるかといったことや、どういう場所のがんが増えるかという研究が行われているわけですね。
それらのデータによって喉頭がん、咽頭がん、食道がん、胃がん、すい臓がん、大腸がん、乳がん、これら全てが増えるということがわかっています。
ではなぜ大腸がんをはじめとしてさまざまな部位のがんのリスクがそんなに増えてしまうのでしょうか?
アルコールはどのようなメカニズムでがんの発生に影響を与えるのかをお話ししましょう。
体内で吸収されたアルコールは肝臓で代謝されてアセトアルデヒドになります。これが非常に強い毒物で身体をサビさせる毒物なのです。
適量の飲酒であれば、アセトアルデヒドは肝臓でさらに分解されて酢酸という無害な物質になるのですが、過剰な量の飲酒の場合は肝臓で分解しきれずにそれが血液の中に増えてしまう。
つまりそのアセトアルデヒドを含む血液が流れているところの細胞の遺伝子の全てがダメージを受けると考えていただいたらいいと思います。遺伝子に傷がつくとどうなるかというと、長期的にはがんが起きてくるということになります。
このようなわけで、過剰にアルコールを摂取するとがんの原因となるのです。
アルコールががんの原因になりうるとはいえ、アルコールは「百薬の長」と言われてもいます。実際に、疫学調査により実証されていることなのですが、アルコールを全く飲まない人と比べると、少し飲む人というのは死亡率が少なく、長生きするんです。
例えば、フランスで赤ワインをよく飲む地方の人は煙草をよく吸って脂肪を沢山食べているにも関わらず、心筋梗塞とか動脈硬化、狭心症といった病気にかかる人が少ないのです。
しかし、飲み過ぎてしまうと、先ほどから申し上げておりますようにがんのリスクなどが高まって死亡率が上がっていってしまうのです。
ですから、適量を飲酒するように心がけることが大事です。その適量の目安は、1日あたり、ビールなら中瓶1本(500ml)、清酒なら1合(180ml)、ウイスキーやブランデーならダブル1杯(60ml)、焼酎は0.4合(72ml)、ワインは2杯(240ml)といったところです。
ただ、お酒の強さは個々人で違いますので、お酒に弱いという自覚がある人はアルデヒドを分解する力が弱いということですから、目安よりもさらに少なめにとどめておいてください。
自分に合ったお酒の量を見極めて、その時々での自分の体調も考えながら、上手にお酒と付き合っていきましょう。そすれば、お酒は百薬の長として、みなさんの長生きをサポートしてくれますよ。
参考:国立がんセンターhttps://epi.ncc.go.jp/can_prev/evaluation/793.html