2020.03.17
ED(勃起不全)と動脈硬化-EDは酸化ストレスが関連
男性不妊の原因でもある勃起不全(ED)についてお話します。EDの原因として、実は酸化ストレスと大変関わりがあるのです。
今回は、このEDと酸化ストレスとの関わりついて解説します。
突然ですがEDの話の前にダイナマイトのお話をしましょう。
ダイナマイトは、数十年前にノーベル賞の創設者であるアルフレッド・ノーベルがニトログリセリンの安定化に成功して作られた爆発物です。
このダイナマイトの原料であるニトログリセリン、、よくドラマや映画などで俳優さんが胸を押さえて「うっ!薬をくれ!」と言って、その薬を舐めると「はぁー」と一瞬で落ち着くシーンを観たことがあるのではないでしょうか? そう、その薬がニトログリセリン、つまり血管がぎゅっとしまって胸が痛くなる狭心症という病気の薬としても知られています。
狭心症を起こした人は、このニトログリセリンを舐めると、心臓に血液を送る血管が開いて、痛みが止まることが分かっています。
ところがこの不安定でダイナマイトの原料にもなるニトログリセリンが、なぜ狭心症に効くのか、これが解明されるまでに実に100年かかりました。
それがわかったのが1970年代です。
アメリカの内科医であるフェリド・ムラド博士がニトログリセリンやその関連物質を調べて、“なぜ血管が開くのか?”を研究をしたのです。
そしてニトログリセリンが心臓の血管の壁である平滑筋から、酸化ストレス物質を放出させることによって血管が広がるという現象をみつけたのです。つまり血管から酸化ストレス物質を追い出すのです。そしてフェリド・ムラド先生はある酵素の阻害剤を発見し、これにも同じような効果があるということを発見しました。
フェリド・ムラド博士が発見した酵素の阻害剤が、ニトログリセリンと同じ効果が期待できるとして、当然製薬会社は狭心症に使える薬にしようと臨床実験を始めました。
しかし臨床実験をやっているうちに、どうも心臓よりも男性の下半身の方に効果が高いということが判明したのです。これが現在、製薬会社からバイアグラという商品名で販売されているのです。
男性不妊は酸化ストレスによって男性の下半身の血管が細くなり、血液が上手く流れないということが原因で起こっていることが多いのです。そのため、バイアグラを飲むことでEDが改善するのです。つまり、EDの大きな原因は酸化ストレスだと、言い切ることができます。
ちなみにこのフェリド・ムラド博士はこのバイアグラの開発につながった研究の業績で、ロバート・ファーチゴット博士、ルイス・イグナロ博士と共に1998年にノーベル医学生理学賞を受賞しています。
EDは血液が下半身にうまく流れないことが原因です。ですからEDの症状が出始めた時に注意していただきたいのが、動脈硬化が起こりかけの可能性です。
動脈硬化というのは、血管の壁が固くなってその壁にコレステロール等が溜まり「プラーク」と呼ばれる塊ができることによって動脈が細くなり血液の流れが悪くなる状態です。この動脈硬化が起こる原因も、やはり酸化ストレスが考えられているのです。
動脈硬化に関連するコレステロールの中のLDLというコレステロールは、今までそれ自体が悪者だと言われていました。しかし、それは間違いだということが分かってきています。確かにLDL自体は悪者ではないのですが、身体がサビている状態(酸化ストレスが高い状態)だと酸化LDL、つまりサビたLDLになるのです。そのサビたLDLは、血管の壁を抜けられなくなって血管の壁にへばりついてしまいます。そして、そこに血栓ができるのです。これを繰り返すことによって、動脈硬化が進んでいくことが明らかになっています。
ですから動脈硬化もEDもいわゆる酸化ストレスが原因で起こっていますので、身体のサビを下げることが、動脈硬化もEDも防ぐことにつながります。