私は岐阜大学と京都にあるルイ・パストゥール医学研究センターで酸化ストレスの研究をしています。
喫煙はなぜ新型コロナウイルス肺炎の重症化リスクなのかについて解説をします。
武漢発新型コロナウイルスの特徴ですが、スライドのような特徴があります。
これは3月20日のYAHOOニュースの引用ですが、イタリアの致死率8%はなぜか?という記事です。イタリア国立衛生所の発表によりますと、死者のうち3つ以上の疾患を抱えていた人が半分、まったく疾患がなかった人は実は1%以下だったのです。そして死者の平均は80歳近い年齢です。これは言い換えると、高齢者であっても基礎疾患がない方は恐れて過ごす必要はあるのか?という風にも言えると考えています。
これは1日前の報道ですが、韓国での死亡率が1%でイタリアの死亡率が8%なのはなぜか、韓国での感染者が若い人でかつタバコをほとんど吸わない女性たちです。一方イタリアでは高齢者と超高齢者が感染しておられて、ほとんどが喫煙者である、つまりタバコを吸っている人にリスクが高いという報道です。
さて、そのあとすぐにWHOがメッセージを出しました。新型コロナ感染症の予防と重症化予防にはタバコを吸わないでほしい。喫煙者はこの機会にぜひ禁煙をしてくださいというメッセージでした。
私と教室の岡田助教は、コロナウイルス肺炎は間質性肺炎で、大きな酸化ストレスがかかっているということを発信してまいりました。
たばこの健康被害ですが、みなさんご存じのように1日20本、20年以上つづけて紙巻きたばこを吸っていると肺がんになりやすくなります。しかしながら、煙が直接当たらない臓器でもがんは増えるんですね。たとえば食道がん、胃がん、乳がん、大腸がんまでも増えてしまいます。これはなぜでしょう。
紙巻きたばこを吸うと、唾液の中にアセトアルデヒドという体をサビさせる毒物、発がん性物質が分泌されます。そしてつばを飲み込むとアセトアルデヒドが吸収されて全身がサビて炎症が起きてしまうということです。ですから煙が当たらない場所のがんも増えてしまいます。
そしてタバコには有害物質がたくさん含まれていまして、喫煙者ではそれがもともと肺に大きなダメージを与えているのですが、そこにアセトアルデヒドの酸化ストレスが加わることで間質性肺炎を起こした場合には非常に重症化して死亡しやすくなるということです。
紙巻きたばこを吸うと唾液の中にアセトアルデヒドが分泌されるという論文はこちらに示す通りたくさんございます。
とくに一番最後の論文は、抗酸化剤を飲んでいただくとタバコを吸っても唾液中のアセトアルデヒドの分泌量が減りますという論文です。つまり、抗酸化治療がタバコを吸ったときの健康リスクを低減できる可能性があるという論文です。
唾液に含まれるアセトアルデヒドは非常に微量です。
余談ですが、2004年時点では、微量のアセトアルデヒドを測定するのは不可能でした。しかしどうしても実験に必要であったことから、2005年に私は臨床検査会社BMLにアセトアルデヒド測定系の樹立を依頼しました。これは無償でなく150万円くらいかかったのですが、その後微量測定ができて現在では唾液中のアセトアルデヒドを正確に測定できるようになっています。
さて、間質性肺炎は後に肺がんになりやすいということが明らかになっています。これは国立がん研究センターの報告ですが、間質性肺炎は肺胞構造の破壊と繊維化をもたらす病気なので、肺がんのリスクを高める重要な因子ですと書かれています。これは特発性間質性肺炎に関するものだと思うのですが、今回のコロナウイルス肺炎も非常に重症の肺炎の部分は元に戻らないということが報告されていますので、このような強い肺炎を起こした部分には後々肺がんができてくる可能性が高いと私は考えています。
酸化ストレスを下げる方法を今一度お話いたします。まずは禁煙、そして大量のお酒を飲むのをやめましょう。肥満・糖尿病の方は血糖値が高いと酸化ストレスがあがるので糖質制限をしてください。十分な睡眠そして精神的ストレスを下げることも有効です。体を温めるのは、直接酸化ストレスを下げるわけではないのですが、免疫力があがるので良いと思います。そして、抗酸化サプリメントは正しく摂取をしてください。
※当動画・テキストで公開している内容は、岐阜大学 抗酸化研究部門 特任教授 犬房春彦の個人の見解であり、所属する組織の公式見解ではありません
※当動画・テキストで公開している内容は、岐阜大学 抗酸化研究部門 特任教授 犬房春彦の個人の見解であり、所属する組織の公式見解ではありません。