2021.07.08
【医師監修】酸化ストレスに効果のあるサプリメントや食事のすすめ
最近よく耳にする「酸化ストレス」。これは体内の活性酸素量が過剰になり抗酸化システムとのバランスが崩れてしまうことを言います。疾患や老化につながるとも言われるため、健康や美容を考えるなら少しでも軽減したいものです。飲酒やタバコ、適度な運動などの生活習慣を見直すとともに食事やサプリメントなど口に入れるものにも気を遣うとより効果が高まります。
この記事では酸化ストレスの軽減にサプリメントや食事を活用したいという人へ向けて、酸化ストレスに効果のあるサプリメントの情報と食事のポイントを解説します。
酸化ストレスの軽減には生活習慣の改善に加え、サプリメントや食事から抗酸化効果を得ることも有効です。しかし酸化ストレスは手軽に変化を数値化して確認することが難しいため、残念ながら効果の疑わしいサプリメントも存在します。
あいまいなデータや広告の体験談を頼りにするのではなく、医学的データと信頼できるエビデンスのあるものを選びたいものです。
そのためには正しい知識を得ることが大切です。酸化ストレスの軽減に有効な成分やその摂取において注意すべき点などを知っておきましょう。
サプリメントには様々な成分がありますが、その成分がどの様に働くのかをご紹介します。
コエンザイムQ10は体内でエネルギーを産生するのに必須の物質であり、老化の原因である活性酸素を消去することから、アンチエイジングの成分とも言えます。
イワシなどに多く含まれますが、1日の目安量を摂るためにはイワシだと20匹必要です。さらに体内のコエンザイムQ10は年を取ると減少するため、サプリメントでの摂取が効果的でしょう。
健康と美容に効くと言われるビタミンCは果物や野菜に多く含まれます。皮膚や血管等を作るのに必要なコラーゲンと呼ばれるタンパク質の生成に重要な成分で、肌や血管を老化から守るほか、動脈硬化等の予防にも役立ちます。
体外に排泄されやすいため、一度にたくさん摂るのではなく、食事やサプリメントをうまく活用してこまめに摂取しましょう。
グルタミンは体内に一番多く含まれるアミノ酸で卵や肉などに含まれています。筋肉の構成成分であるほか、疲労や体臭の低減、胃腸の粘膜保護、筋肉疲労回復などに効果があります。
グルタミンは体内で生産されますがエネルギーとしても消費されます。運動や体調不良などでエネルギーを過剰に消費すると体内のグルタミンも減少し、疲労や体調回復の遅れに繋がります。
Lシスチンは肉や小麦粉に多く含まれています。シミの原因であるメラニンの生成を防ぎ、お肌のターンオーバーと呼ばれる肌の生まれ変わりを促進する作用があるため、美肌効果が期待できる成分です。
アルコールに含まれる酸化ストレス物質であるアセトアルデヒドなどを体外に排出する作用もあります。
フマル酸はクエン酸の代わりに酸味を加えたり、食べ物を膨らませるベーキングパウダーに使われたりと食品に添加されることも多い成分です。
体内でエネルギーを生み出す過程で作られる中間物質で、速効性のエネルギー源として役立ちます。この成分が大きく関わるエネルギー生産の経路が活性化されると乳酸の分解が早くなり疲労回復が向上すると言われています。
コハク酸は昆布や貝などに多く含まれる旨味成分として知られている重要な成分であり、体内でエネルギーを生み出す過程で作られる中間物質でもあります。
コハク酸が体内に取り込まれると速効性のエネルギー源として役立ち、近年では抗がん作用の可能性も示唆されています。
ビタミンB2は豚の肝臓等に多く含まれています。皮膚や粘膜の健康を保つはたらきがあるほか、肌や髪、爪の発達を促し、美しく保つ効果もあるので「美容のビタミン」とも呼ばれる成分です。
過酸化脂質と呼ばれる動脈硬化の原因である脂肪の分解にも役立ちます。
ナイアシンはビタミンB3とも言われ、鰹などの魚や肉に多く含まれます。糖質や脂質の代謝を上げてくれるので細胞内の酸化ストレスを低下させるために必要な物質です。
アルコールを分解する酵素もサポートするのでお酒を飲む人にも大切な栄養素です。熱湯に溶けやすいため煮物などでは煮汁に溶け出してしまうので、注意が必要です。
酸化ストレスは体内の活性酸素が過剰となり、抗酸化システムとのバランスが崩れて起こるものです。抗酸化システムの働きを活発化させ、過剰な活性酸素を抑えることは酸化ストレスの軽減に役立ちます。
様々な食品には抗酸化成分が含まれていますので、普段の食事を見直すことも有効です。抗酸化成分にも注目して日々の食事を考えてみましょう。
色の濃い食品には抗酸化物質が多いと言われています。たとえばブルーベリーやトマト、にんじん等が挙げられます。
これは生命にとって最も大切とされる果肉や臓器などを紫外線から守るために、色の濃い抗酸化成分で守っていると言われています。
同じ魚でも、年中紫外線が強く熱い場所に生存する熱帯魚の方が色鮮やかなのも納得できます。ナッツに含まれるビタミンEにも抗酸化作用がありますので、間食などに摂るのも効果的です。
ポリフェノールにも抗酸化効果があります。代表的なものとしてワインが挙げられます。ワインには様々な種類のポリフェノールが含まれているので、適量飲むのもいいでしょう。
炭水化物に多く含まれる糖質は、摂りすぎると血糖値が上昇します。これにより酸化ストレスも上昇すると言われています。
そのため、今食べている炭水化物の一部を置き換えるなど、無理のない範囲で少し控えてみるのも有効かもしれません。また白米を玄米にかえるなど、血糖値の上がり具合が比較的緩やかである茶色い穀物にするのもいいでしょう。食品を選ぶときは抗酸化作用だけでなく、糖質の含有量にも注意してみてください。
参考: 酸化ストレスの観点から推奨される食事とは?(ルイ・パストゥール医学研究センター 抗酸化研究室)
抗酸化作用のある食品を意識したいと思っても、現代人の生活スタイルではなかなか難しいでしょう。サプリメントで手軽に足りない栄養素を補うのも一つの方法です。
日本ではサプリメントに安全性試験や臨床試験が義務づけられていません。ですから、足りないからと言って、多量のサプリメントを摂取するのはお勧めしません。正しい知識を身につけサプリメントの信頼性を見極めましょう。
サプリメントを選ぶときは科学的エビデンスの有無を確認しましょう。スタイルのいいモデルやいつまでも若々しい芸能人などの体験談は魅力的ですが、見るべきは華やかな面ではなく堅実なデータです。
たとえばある特定の物質が体に良いとされている成分も組み合わせ次第では逆効果になりえますし、同じ効用をうたった2種類のサプリを一緒に飲めば効果が倍になるわけでもありません。広告で強調される成分そのものより、組み合わせと配合比率が大事なのです。
また、副作用などの安全性も注意したいところです。パッケージだけではよく分からないというときは、買う前にメーカーに問い合わせるのも良いでしょう。納得できる説明をしてくれるかどうかも判断材料になります。
サプリメントの有効性はインパクトのある宣伝文句だけでは判断できません。サプリメントは健康食品のようなもので、医薬品やトクホ(特定健康用食品)ほど厳しいルールは適用されていないからです。
効果がありそうな宣伝文句も医学的なデータに基づいているかどうかを判断しましょう。データとは数字です。たとえば酢を飲むと体がやわらかくなるといった迷信的なものは医学的データとは言えません。
また、細胞や動物実験のデータしか出していないところにも注意が必要です。データが人間に反映されるか分からないまま販売している商品は信頼すべきではないでしょう。逆に言えば実際の人間でデータをとった商品は一定の信頼性があると言えます。
参考: 効果的なサプリメントとそうでないサプリメントの見分け方(ルイ・パストゥール医学研究センター 抗酸化研究室)
酸化ストレスの軽減を目的に食事やサプリメントなどで抗酸化成分を取り入れるのは効果的です。食生活の見直しは、無理のない範囲で少しずつ実践していきましょう。
一方でサプリメントは手軽に摂取できますが、安全性や有効性を見極める必要があります。印象に残る宣伝ではなく確かな実験データに基づいた科学的エビデンスがあるかどうかで品質を判断します。パッケージは細かくチェックし分からなければメーカーなどに問い合わせるなど、購入の際はしっかりと吟味しましょう。