【研究者インタビュー】「薬に頼らない医療を目指して」薬剤師でもある研究者が語る、人々の健康を“土台”から支える抗酸化の可能性

東海国立大学機構 岐阜大学 高等研究院 科学研究基盤センター 共同研究講座抗酸化研究部門
楊 馥華 特任准教授

楊 馥華先生

人生の進路を決定づける出会いは、時に予期せぬ形で訪れるものです。医療一家に生まれながらも、子どもの頃の自由研究をきっかけに研究者の道を歩み始めたのが、岐阜大学 抗酸化研究部門の楊 馥華先生です。

なぜ医師ではなく研究の道を選び、どのようにして「抗酸化」というテーマにたどり着いたのでしょうか。今回は楊先生に、研究者としての原点となった経験から、その先に見据える未来の医療まで、詳しくお話を伺いました。

 

なぜ研究者になったのか?薬剤師としての葛藤と「酸化ストレス」との出会い

―楊先生が研究の道に進んだ経緯を教えてください。

楊先生:実は研究の道に進むことは全く考えていませんでした。それどころか、私の女性研究者のイメージは、「長い髪を一本で結んだ化粧っ気のない女性」でしたので、どちらかというとなりたくなかったです。

私の祖父は台湾で開業医をしていましたし、父も台湾で薬剤師の免許を取得後、日本の岐阜大学医学部に進学し医師免許を取得した医師です。台湾では祖父の診察姿をずっと見ていました。夜は看護師さんによく遊んでもらったのを覚えています。それに普段から、父親の背中を見て育ったので、私自身も自然と「医師になる」と決めていました。残念ながら医師になることに縁はなく薬剤師になりました。

「研究の道もある」と知るきっかけになったのは、小学校4、5年生だったかな?正確な時期は忘れてしまいましたが、その頃の夏休みの自由研究です。理科の先生から「今まで先輩たちが誰もできなかった課題があるんだけど、やってみる?」と声をかけられたんですね。

課題は「植物の道管のねじれの研究」というものでした。それを聞いた時、実はすぐ実験方法が浮かんだんです。簡単にできそうだと思い、特に何も考えずに引き受けました。要は、鳳仙花を色のついた水で水耕栽培すれば道管に色がつきますよね。その鳳仙花を茎だけにして、その茎の上から下まで縦線に一本の傷をできるだけ綺麗に入れるわけなんです。そうするとこれが茎全体の目印となるので、今度はその茎を薄く輪切りして、その断面を顕微鏡で観察するんです。茎全体を観察するのは大変なので、一定間隔で茎を輪切りし、色のついた道管が目印からどのくらいのところにあるのかを観察していきました。これを繋げれば、ある程度の道管のねじれが予測できると考えたわけなんです。夏休みが終わって先生に提出したのですが、「もう少し実験しないか」と言われ、結局2年くらいかなぁ?続けたような気がします。その作品を、私の知らないうちに先生が日本学生科学賞 ※ に応募していて、中学校の部で学校賞を受賞。天皇陛下から授賞式で直接賞をいただきました。

父は受験の邪魔になるからと研究にはあまり賛成ではありませんでした。中学、高校を卒業し、大学では薬学部に進み、薬剤師の免許を取得しました。就職を考えたときに、病院薬剤師や薬局薬剤師になるのがなんとなく嫌でした。薬剤師の仕事は投薬ミスがあってはならないし、やりがいのある仕事です。ただ処方箋通りに薬を出すという仕事に興味がありませんでした。そんな葛藤を父に話した時、「昔研究をしていたのだから、研究に進む道もあるんじゃないか」と言われたんです。

もともと人に言われたことをただやるのが好きじゃないし、人と同じことをするのは面白くないと思っていたので、自分のやったことが世界に届き、医療の土台となるっていいかも!という軽いノリから、研究をしよう!それが、岐阜大学大学院で研究を始めるきっかけになりました。

※日本学生科学賞は、1957年に創設された、中学生・高校生を対象とした国内で最も伝統と権威のある科学コンクール

 

「酸化ストレスって何?」ゼロからの挑戦が始まった日

―色々なテーマがある中でも抗酸化研究の道に進まれたのはなぜなのでしょうか?

楊先生:私が「抗酸化」という世界に足を踏み入れたのは、本当に偶然の出会いからでした。もともと大学院では医学部生化学教室に所属し、がんについて研究をしていました。大学院を卒業した後も、そのままがんの研究を続けていたんですね。そんな中、私が所属していた研究室に犬房春彦先生が来られたんです。

私の研究はずっと細胞レベルの実験で、動物を使った実験はしたことがありません。同じ細胞でも、フラスコ内と身体の中での環境は全く違うので、自分の研究した内容が身体の中でも同じことが起こるのか、実は正直不安でいました。そして私の研究を犬房先生が動物実験でその効果を確かめてくださったんです。とても良い結果だったと聞いた時はとても嬉しかったです。犬房先生と知り合って何年か経過した頃に研究のお手伝いをする機会があり、そこで初めて一緒に動物実験をやりました。そして2013年、犬房先生から「Twendee Xを使った研究を一緒にやりませんか」とお誘いをいただいたんです。生意気にも「がんの研究を続けさせていただけるのでしたら、ぜひ」とお願いして以降、私は細胞を用いた実験を、犬房先生は動物実験と、お互いの専門分野を補完しあいながら「酸化ストレス」の研究が始まりました。

当時は「酸化ストレス」や「抗酸化」という言葉の意味すら全くわかりませんでした。なので、何をどう実験すればいいのかわからず、本当にゼロからのスタートでした。実験器機の業者さんに「活性酸素とか、酸化ストレスの研究をするためのキットってある?」と聞いても、「う〜ん、ないですねぇ」と言われてしまう始末で…。

ヒントを得るために国内外問わず関連学会に参加しました。これによって、海外の研究者にお会いしてお話を聞くことができましたし、血液中の酸化ストレスや抗酸化力を測定する器械を知りました。それに世界の抗酸化剤の効果をさまざまな方向から測定する会社にも出会いました。

実験を開始する前からは「SUPALIV飲んで酔わなくなった」とか、「Twendee Xを飲んでいたら潰瘍性大腸炎が良くなった」、「無呼吸が良くなった」等の体験談をいただいていたので、その病状に似たモデルマウスを作成するなどして、試行錯誤しながら当研究部門独自の研究を始めていきました。

私自身の研究テーマである「がん細胞」に対する効果ももちろん試しました。がん細胞に初めてTwendee Xを投与した時は非常に驚きました。というか、とても焦ったのを今でも鮮明に覚えています。というのも、大学院時代の研究では、よく既存の抗がん剤をがん細胞に投与していたのですが、細胞の形態が劇的に変化することは一度もなかったんです。あまりの変化のなさに、抗がん剤を高容量で細胞にかけてみたりもしたくらいです。それなのに、通常の投与量(血液循環量)のTwendee Xの投与で、がん細胞が劇的に変化したんです。最終的にがん細胞が死滅していたので、最初は、あれっ、濃度を間違えた?とも思いましたが、何度やっても同じ結果で。正常細胞で同じことが起きたらダメなんじゃないの??と逆にものすごく焦って正常な細胞にもTwendee Xをかけてみました。がん細胞と同じように正常細胞も変化してしまっては大変ですからね。しかし、正常な細胞は逆に増えていきました。初めて見た反応で、Twendee Xはすごい〜!!とすごく感動と同時にワクワクしたのを覚えています。

その頃、海外の学会で出会った会社に測定依頼していたTwendee X の結果も出たんですね。なんと、Twendee Xがミトコンドリア内の活性酸素(ROS)を劇的に低下させ、抗酸化力を100%以上も高めるという、これもまた驚くべき結果でした。これはすごい!面白い!いい研究になる〜!!という確信がどこかにありました。当初は、本当に楽しくて、いくつもの研究を同時にひたすら実験しました。おかげで、今は山のようにデータがあります。

これらのデータを使って本格的に学会発表を始めたのは、酸化ストレスの研究が始まって6、7年目以降からだったと思います。この発表を機に多くの研究者からお声をかけていただけるようになり、今に至っています。この研究を進めるまでに色々と苦労もしましたが、この研究に進んで本当に良かったと思っています。

 

“治療”から“予防”へ ―酸化ストレス研究が社会に貢献できること

―楊先生は薬剤師ですが、サプリメントについてどのようなお考えをお持ちでしょうか?

楊先生:抗酸化研究を続ける中で、私の「薬」に対する考え方は大きく変わりました。薬剤師の私が言うのも変ですが、私は薬が好きではありません。薬はできるだけ飲まないに越したことはないとも思っています。

薬というのは、例えば「血糖値を下げる有効な成分が一つ」見つかると糖尿病の薬になります。でも、「いくつかの成分を配合した1商品が血糖値を下げる」ことがわかっても、薬にはなりません。私にとって薬とは、有効な1つの成分が身体の悪くなった箇所を強制的に改善するイメージです。でも、私たちの身体には、例えば、血糖値を下げる機能のうち一つがダメになっても、別の機能がそれを補う「恒常性(ホメオスタシス)」という素晴らしい機能を持っています。つまり、血糖値を下げるという働きは、一つではないということですね。でも、薬は一つの作用で働くのです。そして、効果が出なかったら、次の薬に変更もしくは追加する。その作用が強すぎたり、体に合わなければ副作用として症状が出るわけですね。

でも、身体の恒常性機能は全て繋がっています。悪くなったところがあれば、他の機能が自然と助けに入るから無理がないんですね。身体の恒常性機能が働きやすいように体調を整えてあげることこそが、無理なく身体の最もいい状態に整えてくれるのではないかと考えています。この手助けができるのが、サプリメントであり、抗酸化効果を持つTwendee XやMtcontrol、SUPALIVは良い役割をすると思います。

ただ、サプリメントにもものすごく多くの種類がありますよね。効果が期待できるからという理由で食物の中から1成分を抽出したものも沢山ありますが、私の中ではそれは薬と同じで、サプリメントとしてはちょっと不自然な感覚を持っています。というのも、食事として摂るからこそその効果が発揮できるのであって、実はそれだけ抽出したものを高濃度摂るのが本当に良いかはわからないのではないかと思っているんです。それに、私たちの身体は1成分でできているわけではないので効果は限定的になるんじゃないかと考えています。不足したものを補うという点では良いですよね。でもやっぱり、サプリメントもバランスが重要だと思っています。

身体の恒常性が整えば、様々な病気に対応できるだけでなく、そもそも病気になりにくい身体を作ることができると思います。例えば、がん家系の方は必ずがんになるわけではありません。それまでの生活習慣などが、その遺伝子のスイッチを押すか押さないかだと思います。つまり、病気になる前の「未病」の段階でいかに対処するかですね。ここには、抗酸化が大いに関係してきます。サプリメント、特にバランスの取れた抗酸化サプリメントはこの手助けができる、この研究をするようになってからこのように考えるようになりました。

―楊先生が研究において大事にされていることは何でしょうか?

研究者として私が何を大切にしているか、その答えは「自己満足で終わらないこと」。これに尽きます。今やっている研究が最終的にどう社会に還元され、一人でも多くの人を助けることに繋がるのか、このことを意識しています。人に害を与えるわけにはいきませんからね。でも、こうやって強く思うようになったのも、この抗酸化研究に出会ったからこそだと思います。

「研究」という言葉は、非常に広い意味を持ちます。極端な言い方をすれば、どんな些細なことでも、一つのテーマを突き詰めていけばそれは「研究」になります。でもせっかく研究をするのであれば、人の健康に役立つ研究がしたいですね。一つの遺伝子の働きを細かく追求するような基礎研究も、創薬に繋がっていく可能性があるので素晴らしいものです。しかし、私の目標は一つの疾患への貢献というより、「人の健康」への貢献です。ものすごく広範囲ではありますが、今の抗酸化研究はまさにこの目標を達成するための研究そのものだと思っています。

病気になってしまった後でも、酸化ストレスを抑えることでその進行を遅らせる「治療」への貢献、そして本質は「予防」が重要だと思っています。増え続ける医療費という社会的な課題に対しても、私たちの研究が予防医療を普及できれば、その解決の一助になれるのではないかと期待しています。

私の研究の原点は、父の背中を見て抱いた「医療の道に進みたい」という想いです。その想いは、研究者となった今も、形を変えて私の心の中にずっとあります。だからこそ、私の研究は、やはり「人への貢献」に結びつけていきたいです。それが、私が研究者として歩み続ける上で、大事にしている信条です。

最近は、多くの素晴らしい研究者や臨床の先生方と共に共同研究をする機会が増えてきました。既存の治療ではなかなか治らない病気や症状、「年のせいだ」と言われて諦めてしまっている患者さんを、なんとかしたいと考える先生方が多いです。私たちだけではできることに限りがありますが、こうした先生方と協力し、様々な分野で同時に研究を進めることができれば、そのスピードは格段に上がります。私たちの研究は、単なるサプリメントの研究ではなく、これからの医療を変え、人々の健康の土台を支えるための挑戦でもあると思っています。この研究が、一人でも多くの人を助けることに繋がる。その期待を持って、これからも研究を続けていきたいと思います。

 

おわりに

自由研究という純粋な探求心から始まり、常に「人への貢献」を胸に抗酸化研究の道を切り拓いてきた楊先生。その穏やかな語り口の奥には、研究者としての揺るぎない信念と、医療の未来を見据える熱い想いが宿っていました。

病気になる前の「未病」の段階から健康の土台を支えるという先生の研究は、今後の予防医療の在り方を大きく変える可能性を秘めています。

岐阜大学 高等研究院 科学研究基盤センター 共同研究講座抗酸化研究部門

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東海国立大学機構 岐阜大学 高等研究院 科学研究基盤センター 共同研究講座抗酸化研究部門
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