【医師監修】酸化ストレスと喫煙・動脈硬化の関係とは!? フリーラジカルから逃げ延びるポイントを解説
2021.09.14
喫煙はフリーラジカルや活性酸素の発生を助長し、酸化ストレスを引き起こします。酸化ストレスが高くなると活性酸素は健康な細胞を攻撃し、傷つけられた血管壁が詰まって動脈硬化のリスクが高まります。
このように酸化ストレスが原因の一端である疾患は身近に多く存在するため、フリーラジカル(活性酸素)を抑えることは健康を保つことにつながるのです。この記事では酸化ストレスと動脈硬化の関係について解説します。
酸化ストレスと喫煙・動脈硬化の関係
喫煙は動脈硬化につながると言われますが、実はそのつながりには酸化ストレスが関わっています。タバコの煙に含まれる有害物質が体内に取り込まれると、これが引き金となって体内で酸化ストレスが引き起こされます。
体内のフリーラジカルや活性酸素が増えて抗酸化システムとのバランスが崩れると、処理しきれなかったフリーラジカルや活性酸素は体内の酵素や細胞などを傷つけてしまいます。これにより血管壁が傷つけられると血管内にプラークが溜まって動脈硬化を引き起こすのです。
喫煙がフリーラジカルや活性酸素を発生
喫煙すると唾液中にアセトアルデヒドが分泌されます。また、タバコの煙には一酸化窒素や二酸化炭素、ニコチンなどの有害物質が含まれています。これらの有害物質が、唾液や呼吸から体内に取り込まれることによって、フリーラジカルや活性酸素が産生され、酸化ストレスが上昇します。
フリーラジカルとは
人間は脳や体を使うとき酸素を消費します。酸素は活動エネルギーに変わる過程で活性酸素と呼ばれる反応性の高い物質に変化します。活性酸素は本来体内に入り込んだ細菌やウイルスを退けたり細胞間のシグナルを伝達したりするなど、人体に有益な働きをするものです。
しかし他の物質を酸化させる力が非常に強いため、過剰に産出されると健康な細胞まで攻撃するようになってしまいます。活性酸素の中でもスーパーオキサイドやヒドロキシルラジカルは不対電子(対を成していない電子)を持っています。このような不対分子を持つ原子や分子はフリーラジカルと呼ばれます。周囲の物質から電子を奪う力、いわゆる酸化させる力が極めて強いのが特徴です。
関連記事: 「酸化ストレス」とはどんなものか?(ルイ・パストゥール医学研究センター 抗酸化研究室)
フリーラジカルにより酸化ストレスが発生
酸化ストレスの原因は体内の抗酸化システムの許容量を超えて活性酸素が過剰に産出されることです。過剰な活性酸素は健康な細胞まで攻撃してしまうため、臓器やたんぱく質、遺伝子などにダメージを与えます。
活性酸素にはスーパーオキサイド、ヒドロキシルラジカル、過酸化水素、一重項酸素の4つがありますが、中でもフリーラジカルであるヒドロキシルラジカルは極めて反応性が高く、たんぱく質や脂質、糖質など、あらゆる物質と結びつきます。
活性酸素による人体へのダメージのほとんどはこのヒドロキシルラジカルによるものと考えられています。とはいえ、フリーラジカルではない過酸化水素も金属イオンや光に反応してヒドロキシルラジカルを生成するため、ヒドロキシルラジカルだけに気をつければ良いというものではありません。
酸化ストレスが動脈硬化を引き起こす
体内の活性酸素が過剰に産出される酸化ストレス状態に陥ると、活性酸素はタンパク質や脂質、DNAや細胞、組織などを傷つけていきます。。血管の内側にある内皮細胞を傷つけられると、血液中を流れる酸化されたLDLコレステロール(酸化LDL)が入り込み、コレステロールを大量に蓄積した泡沫細胞を形成していきます。LDLに含まれる脂質には酸化しやすい不飽和脂肪酸が多いため、活性酸素により酸化しやすいのです。
血管壁に沈着した酸化LDLは白血球のマクロファージに捕食され、残骸はプラークとなって血管壁に溜まります。これにより血管が詰まり引き起こされるのが動脈硬化です。
関連記事: 喫煙による酸化ストレスと動脈硬化(ルイ・パストゥール医学研究センター 抗酸化研究室)
フリーラジカルを抑えるポイント
酸化ストレスを抑えるためには体内のフリーラジカルや活性酸素を抑える必要があります。フリーラジカル(活性酸素)を抑えるには酸化ストレス値を低下させる、もしくは抗酸化物質摂取量を増やすという2つの方法があります。
そのためには、体内に取り込む活性酸素や、体内で産生される活性酸素を減らす必要があります。
酸化ストレスを下げる
酸化ストレス値を減らすには喫煙を止めるのが有効です。たばこは煙に含まれる活性酸素を体内に取り込むだけでなく、アセトアルデヒドによる体内の活性酸素の産生にもつながります。
同じようにアルコールの摂取も大量のアセトアルデヒドが体内に入ることになるため、適量を守ることが重要です。他に避けたいものは紫外線です。紫外線を浴びた皮膚は体を守るために活性酸素を発生させるため、日傘やカーディガンなどで直射日光を防ぎましょう。紫外線に触れているのは肌だけではありません。目も同じように活性酸素を産出するためサングラスをかけるのも効果的です。
また、適度な運動も酸化ストレス値を下げるのに役立ちます。運動は酸素を多く取り込むため活性酸素が産出されるという面はあるものの、適度な運動であれば酸化ストレスに打ち勝つ力が身につくのでデメリットよりメリットのほうが大きいです。とはいえマッチョと呼ばれるような多量の筋肉は不要です。酸化ストレス値を減らすのが目的であれば、ウォーキング程度の負荷を目安にしましょう。
抗酸化物質摂取量を増やす
体内の活性酸素を除去する抗酸化システムの働きを上げるために抗酸化物質を摂取するのも、酸化ストレスを減らすのに有効です。抗酸化物質はビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールやカロテノイドなどがあります。
ポリフェノールは植物が光合成によって生成する抗酸化物質で、ブルーベリーに含まれるアントシアニン、緑茶に含まれるカテキン、大豆に含まれるイソフラボンなどもポリフェノールの一種です。カロテノイドは天然の色素で、その色はポリフェノールと同様に抗酸化の役割を果たしています。ほうれん草やカボチャなど、カロテノイドの一種であるβカロテンを基準値以上含むものは緑黄色野菜と呼ばれます。つまり緑黄色野菜には抗酸化物質がたくさん含まれているということです。
これらの抗酸化物質は食品からバランス良く摂取することが理想ですが、実際の生活で必要量を毎日とり続けるのは難しいという人もいるでしょう。その場合は足りない分をサプリメントで補います。ドラッグストアや通販などで気軽に手に入れられますが、残念ながら根拠があいまいな商品も存在します。成分表を見るだけでなく、その根拠が科学的データに基づいているかなどをしっかり自分の目で確認して選びましょう。
関連記事: 酸化ストレスの観点から推奨される食事とは?(ルイ・パストゥール医学研究センター 抗酸化研究室)
まとめ
喫煙はフリーラジカル(活性酸素)の発生を助長し、体を酸化ストレス状態に陥らせて動脈硬化を引き起こす一因となります。たばこの煙には活性酸素をふくむ有害な物質が多く含まれているため、徐々に本数を減らし禁煙まで持っていくのが理想です。
また、フリーラジカル(活性酸素)の発生を抑えるには禁煙の他にアルコールを控えることや紫外線対策、適度な運動も効果的です。あわせて食品やサプリメントで抗酸化物質を摂取するとさらに効果は上がります。酸化ストレス状態など体に深刻なダメージが出る前に生活習慣を見直すことが望ましいと言えるでしょう。