血液検査のHBs抗体とHCV抗体と肝炎ウイルスとの関係
2019.05.19
健康診断に行くと、血液検査があります。それで、血液検査の結果を見ると、何やら専門的な言葉やらアルファベットやら数字が並んでいて、何が良いのか悪いのかがわかりづらいなと思われることもあるかもしれません。
今回はその血液検査の項目の中で、HBs抗体とHCV抗体について紹介します。
抗体とは?
そもそも、「抗体」とは何なのでしょうか? 抗体とは、私たちの身体の中にウイルスやアレルゲンなどの異物が侵入してきたときに、それらをやっつけるために体内で作られるタンパク質のことを言います。また、このウイルスやアレルゲンなどのことを「抗原」と言うのですが、さまざまな抗原に応じてそれぞれの抗体がオーダーメイドのように作られます。
では、HBs抗体とHCV抗体も「抗体」と名前が付いている以上は、抗原をやっつけるためのものなのですが、この抗原とは何でしょうか?
それは「肝炎ウイルス」です。HBs抗体はB型肝炎ウイルスに対する抗体で、HCV抗体はC型肝炎ウイルスに対する抗体です。つまり、血液検査でこれらの抗体の項目が陽性であるということは、以前にそれらの肝炎ウイルスに感染したことがありますよということなのです。
肝炎について
ここで肝炎ウイルスが引き起こす「肝炎」についてお話します。
肝炎にかかると、発熱・倦怠感・食欲不振・嘔吐・頭痛・筋肉痛・腹痛・黄疸・濃色尿・灰白色便などの症状が見られます。肝炎にはウイルス性やアルコール性などさまざまな種類があるのですが、その中で主だったA型肝炎・B型肝炎・C型肝炎について説明しましょう。
A型肝炎はA型肝炎ウイルス、B型肝炎はB型肝炎ウイルス、C型肝炎はC型肝炎ウイルスによって引き起こされる肝炎です。
A型肝炎
A型肝炎は慢性化することがほとんどなく、1~2か月ほどで回復すると言われています。A型肝炎ウイルスは魚介類を生で食べることで感染することが多いです。
感染予防としては、石鹸での手洗いを心掛けることや魚介類を十分に加熱して食べることなどが有効です。
一方でB型肝炎とC型肝炎は慢性化しやすく、注意して経過観察と治療を行っていかねばなりません。肝炎は慢性化すると肝硬変や肝がんへと悪化する懸念がありますから、血液検査でHBs抗体やHCV抗体が陽性であった場合には早めに病院で診てもらいましょう。
B型肝炎
B型肝炎ウイルスの感染者の血液や体液を介して感染します。また出産時に母親が保菌者である場合に産道の出血によって母子感染します。他には、滅菌が不十分な医療器具、ピアスの穴開け、刺青などを介して感染することがあります。
日本では昭和23年から昭和63年にかけて、幼少期に受ける集団予防接種等で注射器が使い回されたことがあり、これによってB型肝炎ウイルスに感染したということが問題になりました。
B型肝炎は大人になってから感染する場合には、慢性化することはあまりありません。しかし、幼少期に感染してしまうと、大人よりも免疫機能が未熟なため慢性化する危険性が高まります。もし、幼少期の集団予防接種を上記の期間に受けているかもしれない方は、血液検査で調べてもらうと良いでしょう。
C型肝炎
C型肝炎もB型肝炎と同様に血液を介して感染します。
このC型肝炎ウイルスは、以前に輸血の際に使用した輸血用の血液、血液凝固因子製剤やフィブリノゲン製剤によって感染者が出たことが問題となりました。現在、輸血によってC型肝炎ウイルスに感染することはありませんが、1992年以前に事故や手術などで輸血を受けた方、1994年以前にフィブリノゲン製剤を使われた方、1988年以前に血液凝固因子製剤を使用された方は、血液検査を受けた方が良いでしょう。
C型肝炎は他の肝炎に比べて慢性化しやすく厄介と言えます。今は良い治療薬も開発されていますから、早めに治療に取り掛かれるといいですね。
最後に
肝臓というのはとても大切な臓器です。私たちの身体に必要なタンパク質を作ったり、栄養を蓄えたり、アルコールなどの有毒な物質を解毒・分解したり、食べ物の消化に必要な胆汁を作ったりと、多岐にわたる働きをしています。
そんな働き者な臓器である肝臓はとても我慢強くもあり、「沈黙の臓器」と呼ばれています。ちょっとやそっとでは自覚症状が現れないのですが、自覚症状が出た時には手遅れということになりがちです。
また、肝臓は酸化ストレスとも深い関わりがあります。特にアルコールを飲む方に注意して欲しいのがアルコール性肝炎です。ウイルス以外にアルコールでも肝炎になってしまうのです。