【医師監修】酸化ストレスの測定・検査方法や測定マーカーとは!?

2021.07.07

体をサビさせ疾患リスクや老化を招くとも言われる「酸化ストレス」

 

酸化ストレスは、体内の活性酸素量が過剰に増えることで起こります。健康や美容を考える上ではぜひとも意識したいものですが、目に見える症状が表れるわけではないため、気にはなるものの自分の状態は分からないという人が多いのではないでしょうか。

 

今は酸化ストレスを尿や血液から手軽に測定できますが、人間ドック項目等には含まれていないため自分で医療機関を訪ねる必要があります。測定結果は日常生活を見直し体調を改善する指針になるでしょう。

 

この記事では自分の酸化ストレス値を知りたい人へ向けて、その測定方法とメリットを解説します。

 

酸化ストレスは測定できる!?

 

体のサビとも呼ばれる「酸化ストレス」は活性酸素の産出と除去のバランスが崩れることで起こります。

 

過剰な活性酸素は健康な細胞を傷つけるため、疾患リスクや老化といったかたちで人体に悪影響を及ぼします。最近ではとくに健康志向の高い女性の間で話題に上がるようになってきた酸化ストレスですが、目には見えず検査や測定をする機会がないため、なんとなく溜まっている気がする、溜まりやすい生活をしているといった感覚的な話でしか語られていません。

 

しかし実は医療機関で酸化ストレスを定量的に計測することができます。検査は自費ですが手の届く料金で測定できるので、自分の健康状態を知るために一度試してみるのも良いでしょう。

 

参考: 酸化ストレスを自分でチェックするには?

 

酸化ストレスの検査・測定方法

 

以前は大掛かりな装置や大規模な実験施設でのみ行われてきた酸化ストレスの測定ですが、今は簡単に測定できるようになりました。

 

とはいえ酸化ストレスの測定は労働安全衛生法に基づく定期健康診断はもちろん、人間ドックの必須項目にも指定されていません。そもそも人間ドックの目的は病気の早期発見・早期治療です。酸化ストレスはさまざまな疾患リスクに繋がりますが、病気の直接原因となるわけでもなければ初期症状として表れるものでもありません。

 

そのため酸化ストレスの測定をしたいと思ったら、自分で医療機関に赴き測定を希望する旨を伝える必要があります。

 

参考: 酸化ストレスを自分でチェックするには?

 

酸化ストレスの測定機器・測定マーカーとは

酸化ストレスは専用の機械で測定します。

 

dROMテストやBAPテストなど測定方法はさまざまですが、検体として使われるのは主に尿や血液です。酸化されたDNA、脂質、たんぱく質の中には尿や血液に出てくるものがあり(測定マーカー)、その量を測ることで酸化ストレスの原因となる活性酸素量を特定できるという仕組みです。

 

また、体内で活性酸素を除去する抗酸化システムの働きを調べる方法もあります。自分がどの程度酸化ストレスを抱えているかを知れば日々の生活を見直すきっかけになり、間接的に疾患リスクの低下や老化スピードを遅らせることに繋がります。

 

参考: 酸化ストレス・抗酸化力 測定機器 |株式会社ウイスマー | 機器一覧 | CARRIO400 FREE carpe diem FRAS4 ユビークマイクロスコープ400 |

参考: 酸化ストレスを自分でチェックするには?

 

酸化ストレスチェックの2つのテスト

 

酸化ストレスの測定にはいくつかの方法があります。

 

もっとも簡単なのは酸化ストレス度のマーカーである尿中の8-OHdG(8-­ヒドロキシデオキシグアノシン)という物質を測定するという方法です。

 

8-OHdGは活性酸素の酸化を受けやすい物質なので活性酸素から受ける体内の影響を分かりやすく反映します。尿中に排泄された8-OHdGの濃度を測ることで酸化によるDNAの損傷具合が分かり、体がどの程度酸化ストレス状態にさらされているかを測定できるという仕組みです。

 

この測定方法は尿で検査できて体を傷つけないということもあり、多くの医療機関で使われています。ほかには血中の過酸化水素などを測定する「d-ROMsテスト」抗酸化力を測る「BAPテスト」などもあります。

 

d-ROMsテスト

d-ROMsテスト(Diacron-Reactive Oxygen Metabolites Test)は酸化ストレスの測定法のひとつです。酸化ストレスは体内の活性酸素が除去システムの上限を超えて健康な細胞を攻撃してしまうことで起こるため、この活性酸素量を調べることが酸化ストレスの測定に繋がります。

 

かつては酸化ストレスチェックのために体内の活性酸素・フリーラジカル(不対電子を持つ原子や分子)の測定をしようとしても、その寿命の短さと反応性の高さからうまくいきませんでした。

 

しかしこのテストでは活性酸素・フリーラジカルを直接測定するのではなく、脂質やたんぱく質を酸化させたときにできる代謝産物のROOH(ヒドロペルオキシド)をはじめとした過酸化物を捉えます。検体として用いるのは血液で、簡単で時間もかからず再現性も高い測定法と言えます。

 

参考: 酸化ストレス・抗酸化力 測定機器 |株式会社ウイスマー | d-ROMs |

 

BAPテスト

BAPテスト(Biological Anti-oxidant Potential Test)は体内で過剰産出された活性酸素を除去する抗酸化システムを測定する測定法です。体の抗酸化力を測ると言い換えても良いでしょう。

 

人間の血液には活性酸素・フリーラジカルに対抗する抗酸化物質が多く存在します。血液を検体とし、第二鉄イオンを第一鉄イオンへ還元することで抗酸化力を測定するという方法です。

 

BAPテストの優れている点は検体に含まれる抗酸化物質すべて(尿酸、ポリフェノールなど)の総合的な抗酸化力が測定できる点、そして精度が高いのに簡単な点です。

 

参考: 酸化ストレスを自分でチェックするには?

 

酸化ストレスの検査・測定のメリット

 

酸化ストレスの測定法はさまざまありますが、どれも簡単に短時間で受けることができます。

 

酸化ストレスを測定し自分の状態を知ったとしてもそれが直接疾患リスクを低下させたりアンチエイジングに効果があったりするわけではありません。

 

しかし現状を知ることができれば酸化ストレスの軽減に繋がる食べ物を積極的に摂る、リスクを上げる習慣を控えるなど、酸化ストレスや活性酸素を意識して日々過ごすことができます。

 

疾患リスクの低下

酸化ストレスは多くの疾患と関連していることが分かっています。その数なんと150種以上(※)。例を挙げると癌(がん)、高血圧、動脈硬化、認知症、糖尿病、神経疾患(パーキンソン病、ALS、アルツハイマー)、アレルギー疾患、炎症性疾患とよく知られた名前が次々に出てきます。

 

さらに岐阜大学抗酸化研究部門では花粉症やぜんそくなどとの関連も研究しています。これらの疾患は原因をひとところに求められるものではないため酸化ストレスを軽減すれば確実に予防できるというわけではありません。

 

酸化ストレスの値が高くなればリスクは高まります。酸化ストレス値の把握と軽減は、直接的ではなくとも疾患リスクの低下に繋がることは間違いないと言えるでしょう。

 

※ 参考: 抗酸化研究部門で研究している酸化ストレスに関わる疾患について

 

エイジングケアに役立つ

老化(エイジング)とは人間の生理機能が低下することです。酸化ストレスが高い状態が続くことは、加齢から生じる老化よりずっと速いスピードで老化現象が起こります

 

酸化ストレス値を知ることで老化現象が早まるリスクにさらされているかを把握でき、もし酸化ストレス状態でなければ現在の生活を維持し、逆に酸化ストレス状態であれば生活の改善を考えるきっかけになるということです。

 

ハイスピードで進む老化を食い止める(アンチエイジング)には緑黄色野菜に多く含まれるβカロテンなどの抗酸化物質を多く摂る適度に運動をする、そして酸化ストレスにつながるタバコや電磁波といったものを控えると良いでしょう。

 

抗酸化作用を謳う化粧品についてはエビデンス(証拠)が不確かなものもあるので、購入前に少し調べてみる必要があるかもしれません。

 

まとめ

酸化ストレスは疾患リスクを増加させたり加齢によるものより速い老化を招いたりと体に悪影響を与えます。できることなら普段から少しずつ意識して酸化ストレスがたまりにくい生活を心がけたいものです。

そのために重要なのは現状を知ること。酸化ストレス測定は血液や尿から簡単にできるので、気になったら扱っている医療機関を探してみてください。

今の生活で酸化ストレスがどの程度たまっているのかを知ることは自分の体と生活習慣を見直すきっかけになります。測定の結果を参考に生活を改善し、美容や健康に役立てましょう。