肝臓の状態を調べる血液検査と酵素の種類について
2019.05.23
健康診断の血液検査結果、なんとなくチラッと見ただけでそのままにしていませんか? 血液検査の結果から自分の肝臓の状態を知ることができますから、この機会に自分の肝臓の状態を把握しておきましょう。血液検査にはいろいろな項目がありますが、今回はその肝臓の状態に関わる検査項目について説明をしましょう。
比較的よく耳にするのがγ-GTPやALT(GPT)、AST(GST)だと思います。これらは全て酵素で、この他にもLDH(乳酸脱水素酵素)、Ch-E(コリンエステラーゼ)、ALP(アルカリホスファターゼ)という酵素も肝臓の状態を調べる重要な項目です。では、それぞれの項目からどのようなことがわかるのかを簡単に紹介しましょう。
γ-GTP
タンパク質を合成・分解する働きをします。アルコールを飲み過ぎるとこの値が高くなることがあります。この値が高い時は、アルコール性肝障害・胆汁うっ滞・原発性胆汁性肝硬変・胆石・胆道閉鎖などの疾患の可能性があります。
ALT(GPT)とAST(GOT)
体内のアミノ酸代謝やエネルギー代謝で大きな役割を果たしています。これらの値が基準値を超えたときは、アルコール性肝障害・ウイルス性肝炎・肝硬変・非アルコール性脂肪性肝疾患などが懸念されます。
LDH(乳酸脱水素酵素)
糖質をエネルギーに変える働きをしています。この値が高いと、肝炎・肝硬変・胆道の疾患・癌・白血病・リンパ腫・心筋梗塞・肺梗塞・心不全・甲状腺機能低下症などが考えられます。
Ch-E(コリンエステラーゼ)
神経伝達物質を分解する働きをしています。この値は基準値より低くても高くても良くありません。低い場合には、肝臓でこのコリンエステラーゼを作る働きが低下していると考えられ、劇症肝炎や肝硬変といった病気が心配されます。また、高い場合には脂肪肝の可能性があります。
ALP(アルカリホスファターゼ)
乳製品などに含まれるリン酸化合物を分解する働きをしています。この値が高いと、薬物性肝障害・原発性胆汁性肝硬変・胆汁うっ滞・胆石・胆道閉塞・骨の病気などが考えられます。
以上が血液検査の項目にある肝臓に関係のある酵素と、その基準値から外れることで考えられる病気です。怖くなってしまうような病名が並んでいましたね。基準値を超したからと言って必ずしも肝臓が病気にかかっているわけではありませんが、自分の血液検査の結果に異状があれば、病院に行って精密検査を受けましょう。
さて、血液検査の項目にある酵素とそこから考えられる病気について紹介しましたが、なぜ血液中のこういった酵素の数値を調べることで病気がわかるのでしょうか。そもそも酵素とは一体何なのでしょうか。
酵素とは
酵素は植物や単細胞生物も含む全ての生物の中に存在しています。そして、その生物の中にある物質を分解したり合成したりする際に触媒として使われます。
触媒というのは化学などでよく使われる言葉ですが、何かを化学反応させるときにその反応を促進させ、それ自体は変化しない物質を指します。
例えば、水は水素と酸素からできますが、水素と酸素をガラス容器に入れて熱するだけでは水は出来ません。でも、そこに少量の銅を入れると水素と酸素が反応して水になるのです。銅は触媒として働きましたが、反応後も銅は銅のままで何も変わりません。
つまり、酵素は体内の物質を別のものに変化させる働きをしながら、酵素自体は変化しないという物質だということです。
酵素はそれぞれの酵素の種類によって作られる場所、働く場所が決まっています。先ほど血液検査の項目で紹介した酵素に関して言えば、本来は血液中には基準値の範囲内程度にしか存在しない酵素なのです。
それが基準値を超して存在するというのは、それらの酵素が本来あるべき内臓や骨や筋肉などに病気や炎症といった何らかの問題が生じて、そこに居られなくなって血液中に漏れ出たと考えられるのです。
逆に基準値を下回ってはいけない酵素の類は、酵素の数値が低下していると、その酵素を作る働きをしている臓器などに何らかの問題が生じているとわかります。血液検査というのは、このような酵素の性質を利用して健康状態を診断しているのです。
今回は肝臓の状態がわかる血液の検査項目にある酵素を紹介しましたが、肝臓に関わる酵素というのは随分とたくさんあります。肝臓はタンパク質の合成や栄養の貯蓄、有害物質の解毒や分解、食べ物の消化に必要な胆汁の合成や分泌といった多岐にわたる働きをしています。こういった様々な働きをしているからこそ、いろいろな酵素が関係してくるのです。
肝臓と酸化ストレス
有害物質の解毒をする肝臓は身体に有害な酸化ストレスにさらされることの多い臓器です。肝臓を健康に保つためにも酸化ストレスを下げるようにしましょう。
最後に血液検査で肝臓の状態に関連する項目は多くありますが、血液検査自体は体の全体のパラメーターなので、必ずしも肝臓疾患があるというわけではありません。
専門機関では、血液検査だけでなく、精密検査や病歴や診察などで総合的に診断しています。もし気にかかることがあれば、きちんと医療機関を受診していただくことをおすすめします。