肝炎・膵炎はアルコールとどのように関係しているか?
2018.08.27
お酒が原因で肝臓を悪くした方や、急性膵炎になった人などの話を聞いたことありませんか?
肝炎や膵炎は非常に怖い病気です。肝臓や膵臓は「沈黙の臓器」などと呼ばれるのですが、病気にかかっても自覚症状が出にくく、症状に気づいた時には既に治療困難な状態ということも少なくないのです。
では、肝炎や膵炎がアルコールとどのような関係があるのでしょうか?
肝炎について
まずは、肝炎について説明させてください。
肝炎とは、何らかが原因で肝臓に炎症が起き、発熱や全身の倦怠感、黄疸といった症状が出る病気です。
その原因は約80パーセントがウィルスによるものですが、アルコールもその原因となり得るものなのです。
つまり、お酒を飲みすぎると肝炎を起こす可能性がありますよということなのです。
アルコールと肝炎
では、どのようにしてアルコールが肝炎を起こすのでしょうか。
お酒を飲みますと、体に入ったアルコールは胃や腸で吸収され、血管を通って肝臓に運ばれます。そこでアルコールはアセトアルデヒドに分解されます。
このアセトアルデヒドは毒物なのですが、肝臓ではそのアセトアルデヒドをさらに無害な酢酸にまで分解するのです。このアセトアルデヒドの代謝の8割くらいが、肝臓という臓器で行われます。
そして、この毒物であるアセトアルデヒドの代謝を肝臓でするということは、肝臓はその毒物の影響をもろに受けるわけですね。
アセトアルデヒドは非常に酸化作用の強い毒物なので、それによって生じる酸化ストレスで身体をサビつかせてしまうのです。酸化ストレスにさらされた部分では、漂白剤に触れた皮膚が炎症を起こすのと同様のことが起きるのです。そのようにして、肝臓が酸化ストレスに耐えきれなくなると、肝炎になってしまうんですね。
また肝炎にならないとしても、長期間一定量のアルコールを飲んでいると「脂肪肝」という状態になります。
脂肪肝というのは、肝臓の細胞の中に脂肪がたまっている状態のことなのですが、フランス料理で出てくるフォアグラを思い浮かべていただければいいです。人間の肝臓もフォアグラのように脂がのった状態になる。フォアグラは脂がのっていると美味しいですが、人間の肝臓に脂がのっても何一つ良いことはありません。
脂肪肝という状態が続いていきますと、今度は肝細胞自体が死んでいくんです。死んだ細胞は、固い繊維のようになります。それが肝臓全体に進んでいくと「肝硬変」という病気になってしまいます。
肝硬変になる恐れも
肝硬変になると、黄疸が出たり、肝性脳症による意識障害が起こったり、食道胃静脈瘤というものが出来たりします。食道胃静脈瘤は破裂して大量出血をすると死にかねない危険なものです。そのように危険な病気なわけですが、肝硬変はそれ自体を治す薬というのは存在せず、食事療法による長期的な治療が必要になってしまうんですね。
肝硬変になるのも、やはり酸化ストレスが非常に深く関わっております。
ですから、肝臓に異状があったり、肝炎があったり、それから脂肪肝があるという人はできるだけお酒を控えていただいて、症状が進んでしまわないように気を付けましょう。予防するように心掛けることが大事です。
膵炎について
では、次は膵炎についてお話させてください。膵炎になると、腹痛や背中の痛みなどの症状に見舞われ、それが長く続くと糖尿病や消化吸収障害を引き起こします。
膵炎には急性のものと慢性のものがあるのですが、急性膵炎の約半数くらいは原因不明。免疫の異常、感染症とかいろんなことを言われているんですけれども、わかりません。残りの半分のうちの大半は、「お酒の飲み過ぎ」なのです。これは全体の約4割を占めています。
そもそも膵臓は大きく分けて2つの仕事があります。1つはインシュリンというものを出して、血液中の血糖値を下げるという仕事。もう1つは、食べ物を消化する仕事です。
膵臓で作られる膵液は、脂肪とかタンパク質とかを消化する働きをします。我々が口から食べたものは胃に入って小さくなって、そこから十二指腸に行きます。その十二指腸のところで膵液と混ざって、食べ物が分解されます。ここで分解された栄養素が小腸で吸収されていくわけですね。
ですから、膵臓の調子が悪くなると、胸焼けがしたり、脂っぽい食べ物に弱くなってしまったりします。
膵炎と酸化ストレス
そんな大切な役割を果たしている膵臓ですが、実は膵臓の細胞というのは、酸化ストレスにものすっごく弱いのです。
つまり酸化ストレスによって身体がサビてしまうような状況では、膵臓の細胞がダメージを受けやすいと考えてください。
お酒を大量に飲むと、酸化ストレス物質であるアセトアルデヒドが大量に発生して、身体中を巡りますから、膵臓はダメージを受けてしまいます。それに膵臓が耐えきれなくなった時に、急性膵炎を起こすのだと考えてください。
最後に
肝臓も膵臓もお酒の影響を受けやすい臓器ですから、普段からお酒を飲むときには適量を守ってください。症状が出てからでは遅いですからね。