【医師監修】酸化ストレスと免疫機能の関係性とは!? 免疫細胞の働きも合わせて解説

2021.09.14

人には体内に入り込んだ異物を排除する機能が備わっています。この機能は免疫機能と呼ばれ、さまざまな免疫細胞がこの働きを担って体を守っています。免疫機能に異常が出ると健康な細胞を攻撃したり誤反応を起こしたりしてしまいます。

 

免疫機能の低下には酸化ストレスも関わっているので、酸化ストレスを抑えることは免疫機能の低下を防ぐのに役立ちます。

 

この記事では免疫機能と酸化ストレスとの関係、そして免疫機能低下を防ぐための酸化ストレス軽減法について具体的に解説します。

 

免疫機能とは!?

 

免疫機能とは人体に入り込んだウイルスや細菌などの異物を認識し、攻撃して排除する機能です。

 

生活習慣が乱れたりさまざまなストレスで負荷がかかったりすると自律神経が乱れ、免疫機能が低下します。免疫機能は異常が出ると人体に無害な細胞や組織を攻撃するようになり、臓器や皮膚などに病気を発症することもあります。

 

たとえばほこりを吸い込むとせきが出ますが、これはほこりを異物として認識して排除しようとする免疫機能の正常な働きです。しかし免疫機能が過剰に働いてしまうと、体内に入り込んだ花粉に対して抗体を作り、くしゃみや鼻水、目のかゆみなどのアレルギー反応を引き起こす花粉症と呼ばれる状態になります。このように免疫機能は本来体を守るために存在するものですが、免疫機能のバランスが崩れると、異物に反応しすぎてしまうのです。

 

免疫細胞とは!?

免疫機能を働かせるのが免疫細胞です。免疫細胞は白血球内にあり、血小板など他の血液細胞とともに血液を流れています。免疫細胞の多くは骨髄から生まれ、一部は心臓の上に被さるようにある胸腺から生まれ、増殖、成長します。

 

免疫細胞の種類や働き

免疫細胞は大きく分けて自然免疫である白血球系と獲得免疫であるリンパ球系の2種類に分けられます。自然免疫とは人間が生まれながらに持っている免疫です。

 

免疫細胞が自己(自分)と非自己(自分でないもの)を認識し、非自己であるウイルスや細菌を攻撃して排除します。獲得免疫とは始めから備わっているものではなく、一度異物に侵入された後に獲得する(備わる)免疫です。

 

一度侵入したことのある異物と同じものが体内に侵入したとき、すでにできている免疫を使って対処するのが獲得免疫の機能です。一度かかった病気はその後かかりにくくなるというのはこの獲得免疫の力によるものです。

 

白血球系の免疫細胞

白血球系の免疫細胞は自然免疫で、体の中に侵入してきた細菌やウイルスを飲みこみ破壊する食細胞を中心に構成されています。白血球系の免疫細胞同士は連携を組んで、常に体と命を守っています。

 

白血球系の免疫細胞には樹状細胞やマクロファージなどがあります。樹状細胞は名前の通り木の枝のような突起が四方八方に伸びたような形状をしている免疫細胞です。

 

肺や皮膚などに存在し、異物を発見すると自分の中に取り込んでリンパ器官へ移動、リンパ球系のT細胞やB細胞にその特徴(抗原)を伝えて攻撃させます。マクロファージはアメーバ状の細胞で、異物を発見すると自分の中に取り込んで消化処理(貪食処理)し、樹状細胞と同様に異物の情報(抗原)をT細胞に伝える役割も担います。他には好酸球や好中球なども白血球系の免疫細胞に分類されます。

 

リンパ球系の免疫細胞

リンパ球系の免疫細胞にはT細胞やB細胞などがあります。T細胞はウイルスなどに感染した細胞を見つけて排除する細胞で、ヘルパーT細胞、キラーT細胞、制御性T細胞の3種類に分かれています。

 

ヘルパーT細胞は体内に侵入した異物の情報(抗原)を白血球系の樹状細胞やマクロファージから受け取り、どう攻撃するかを考えて指示を出します。その指示を受けて実際に異物を破壊するのがキラーT細胞です。

 

制御性T細胞はキラーT細胞などが暴走しないよう、働きを抑制したり免疫反応を終了したりする役割を担っています。B細胞は抗体を作る免疫細胞です。樹状細胞などから受け取った情報(抗原)を元に抗体を作って排除を手伝い、その後は次の異物侵入に備えます。

 

酸化ストレスと免疫機能の関係

 

酸化ストレスとは体内の活性酸素が過剰になった状態を指します。酸化ストレスは白血球へダメージを与え、免疫のバランスを崩します。つまり免疫細胞が働きにくくなり免疫機能が低下してしまうということです。

 

酸化ストレスと免疫機能の関係はあまり知られていませんが、免疫機能の低下を防ぐには酸化ストレスを軽減させるという方法もあるのです。

 

酸化ストレスと免疫力の関係

人間は酸素をエネルギーに変えて活動しています。この酸素は外部からの刺激を受けて活性酸素という物質に変化します。活性酸素は本来細胞間の伝達物質となったり免疫機能として働いたりするものですが、過剰に産出されると健康な細胞を攻撃するようになります。

 

人間には活性酸素から体を守る抗酸化システムが備わっていますが、その機能を超えて産出された活性細胞は健康な細胞を攻撃してしまいます。この状態が酸化ストレスです。酸化ストレス状態に陥り免疫細胞である白血球が攻撃されると免疫機能に支障が生じます。

 

細菌やバクテリアに感染しやすくなり、平時は破壊できていた癌(がん)ができやすくなります。またアレルギー性疾患にかかったり状態が悪くなったりするなど、さまざまな悪影響が出ます。

 

関連記事: 免疫と酸化ストレス―酸化ストレスは免疫の敵になる!(ルイ・パストゥール医学研究センター 抗酸化研究室)

 

酸化ストレス対策で免疫機能を維持する方法

 

酸化ストレスは免疫機能の低下を招きます。つまり酸化ストレスを抑えることは免疫機能の低下を防ぎ健康を保つことにつながるのです。

 

酸化ストレスを抑えるには活性酸素を過剰産出する習慣をひかえて酸化ストレス値を減少させ、抗酸化物質を積極的に摂取して抗酸化システムの働きを上げるという両面から対策することが重要です。日常生活のさまざまなところで意識を変えることが酸化ストレスの抑制になります。できることから始めてみましょう。

 

酸化ストレス値の減少

喫煙やアルコール、紫外線は酸化ストレス値を上げます。たばこの煙には過酸化ラジカルをはじめ多くの活性酸素が含まれています。副流煙も同じかそれ以上に活性酸素が含まれているため、自分が吸わないだけでなく煙を吸い込まないよう注意が必要です。

 

アルコールは体内で分解する過程で活性酸素を産出します。適量であれば精神的なストレスを緩和させるなどプラスに働きますが、飲みすぎは禁物です。また、太陽に含まれる紫外線は肌に当たると活性酸素を作ります。

 

紫外線は深いシワやまだらなシミを引き起こす光老化の原因にもなるので、日傘や日焼け止めなどでしっかりと対策しましょう。また、運動不足も酸化ストレスにつながります。運動をすると酸素を大量に消費するため一時的に酸化ストレス値は上がりますが、運動は体に適度な刺激を与え酸化ストレスに対抗する抗酸化力を高めます。

 

体内に備わる抗酸化力は運動によって産出された活性酸素を効率よく除去して酸化ストレス値が高まるのを防ぐので、メリットがデメリットを上回るというわけです。酸化ストレスへの対策としてなら過度な負荷は必要ありません。体が心地よく感じる程度の運動を継続していくことが重要です。

 

抗酸化物質摂取量の増加

酸化ストレスを抑えるには抗酸化物質を摂取して体内の抗酸化システムの働きを上げる方法もあります。抗酸化物質とはビタミンC、ビタミンE、ポリフェノール、カロテノイドなどです。

 

ビタミンCはパプリカ、ブロッコリー、キウイ、イチゴなどに多く含まれます。ビタミンEはアーモンドなどのナッツ類、植物油、アボカドなどに多く含まれるので、植物油でブロッコリーを炒めるなどビタミンCと組み合わせて摂るのも良いでしょう。

 

ポリフェノールとカロテノイドは植物由来の抗酸化物質です。ポリフェノールは8000種類以上もあると言われますが、代表的なのはブルーベリーやぶどうのアントシアニン、緑茶のカテキン、ウコンのクルクミン、大豆のイソフラボンなどです。カロテノイドは緑黄色野菜や甲殻類に多く含まれています。

 

これらを積極的に摂取することが酸化ストレスの軽減につながりますが、忙しい生活の中でさまざまな食品をバランスよく摂るのは意外と難しいものです。足りない分はサプリメントで補うというのもひとつの方法です。

 

ただし市販のサプリメントのなかにはデータの出所が不確かなものも存在します。派手な広告に惑わされず、科学的な根拠に基づいたサプリメントを選びましょう。

 

関連記事:  酸化ストレスの観点から推奨される食事とは?(ルイ・パストゥール医学研究センター 抗酸化研究室)

 

まとめ

酸化ストレスは免疫細胞を攻撃し免疫機能を低下させます。免疫機能の低下は細菌やバクテリアに感染しやすくなるなど体にさまざまな悪影響を及ぼします。免疫機能を高めるには酸化ストレスを軽減することが重要です。

 

酸化ストレスを軽減するには喫煙やアルコールなど活性酸素を産出する習慣をひかえ、ポリフェノールやカロテノイドといった抗酸化物質を積極的に摂取するのが良いです。免疫機能向上のため、毎日の生活習慣や食生活を見直してみましょう。