【医師監修】酸化ストレスと疲労の関係 疲れを溜めないポイントを紹介
2021.07.07
体や心と同様に、脳も使いすぎると疲れます。
脳が疲れる、いわゆる「脳疲労」の状態では脳機能が低下して日常生活にも支障をきたしてしまいます。疲れた脳は体と同じように酸化ストレス状態となってさらに脳が疲れるという悪循環に陥ってしまうので、休息を取りつつ酸化ストレスを軽減していくことが重要です。
そのためには脳疲労や酸化ストレスに対する正しい知識を身につけなければいけません。この記事では脳疲労を感じる人や予防したい人に向けてそのメカニズムと軽減法を解説します。
現代人に多くみられる脳疲労とは!?
疲労という症状は数値化が難しくあいまいですが、日本疲労学会では疲労を「過度の肉体的および精神的活動、または疾病によって生じた独特の不快感と休養の願望を伴う身体の活動能力の減退」と定義しています。
つまり脳疲労とは、脳が疲れて正常に機能しない状態を指します。飽きる、眠くなるといった症状は脳疲労状態に陥ったというサインで、これ以上脳を使いすぎると体に悪影響を及ぼすという警告でもあります。
脳疲労の原因は脳の使いすぎです。スマホやパソコンの登場で情報過多な現代では必要以上に脳を使いすぎる場面が多く見られます。さらに脳は物事への意欲や達成感が大きいと疲労を感じにくくなってしまうため、気づかないうちに脳を使いすぎていたということも少なくありません。
情報処理や思考などで脳を使いすぎると脳に炎症(活性酸素)が蓄積し、いわゆる酸化ストレス状態になります。脳も他の身体部位と同じように、酸化ストレスで疲労状態に陥るということです。
酸化ストレスと脳疲労の関係とは!?
脳に活性酸素がたまるメカニズムには自律神経がかかわっています。自律神経は活動時に活発になる交感神経と、夜間や安静時に活発になる副交感神経がセットになっています。
たとえばデスクワークや事務作業などで脳を酷使すると交感神経が活発に働き、酸素が多く消費されると同時に活性酸素も大量に発生します。
活性酸素は人体に有益な作用もありますが、過剰になると健康な細胞をも攻撃します。人体には過剰な活性酸素を除去するシステムも備わっていますが、産出される活性酸素が多すぎると除去が間に合わなくなります。活性酸素の産出と除去のバランスが崩れた状態を酸化ストレス状態と言い、脳の健康な神経細胞が攻撃されて疲れやだるさを感じるのです。
脳が疲れると酸化ストレス状態となり、酸化ストレス状態になると脳が疲れます。逆に言えば脳の疲労度を下げれば酸化ストレスも下がり、さらに脳の疲労度が下がります。酸化ストレスと脳疲労は「鶏が先か、卵が先か」というパラレルの関係にあると言えるでしょう。
参考: 「疲れ」と酸化ストレスは関係しているの?疲労と酸化ストレス(岐阜大学 抗酸化研究部門)
酸化ストレスを抑え脳疲労を解消する方法
酸化ストレスと脳疲労は相互に干渉しあう関係です。酸化ストレスを抑えれば脳疲労の解消に繋がります。酸化ストレスを抑えるには活性酸素を除去する抗酸化物質を摂取すること、そして活性酸素を大量に産出する状況を控えることの両面を意識することが必要です。
抗酸化物質は酸化しやすく、活性酸素が優先して酸化させるため人体への害が防げます。身近な食物から摂取できるのでぜひ意識してみてください。
抗酸化物質を含む食物摂取
酸化ストレスを抑えるためには抗酸化物質を含む食物を摂取するのが良いでしょう。代表的な抗酸化物質はビタミンC、ビタミンE、カロテノイド、ポリフェノールです。
ビタミンCはキウイ、イチゴなど、ビタミンEはナッツ類や大豆、カロテノイドは緑黄色野菜に多く含まれています。ポリフェノールは緑茶や赤ワインなどの飲み物から摂ることができますが、抗酸化作用を期待してポリフェノールのサプリを飲むことは勧められません。
マウスの放射線モデル実験から、生物は単独のポリフェノールを摂取すると酸化ストレスが跳ねあがることが分かっているからです。ワインをはじめとした食品から適量を摂取するのが体に良いと言えます。食物から抗酸化物質を摂取する際は糖質にも気をつけましょう。
糖質は血糖値を上げます。するとミトコンドリアの機能が下がり、使われるはずの酸素が余って活性酸素が多く作られるのです。たとえば炭水化物なら白米より玄米、脂質ならドレッシングよりマヨネーズというように、糖質を意識して食品を選ぶのも酸化ストレスの軽減に役立ちます。
参考: 酸化ストレスの観点から推奨される食事とは?(岐阜大学 抗酸化研究部門)
参考: ポリフェノールの抗酸化作用についての注意!(岐阜大学 抗酸化研究部門)
過度なアルコール摂取を控える
適量のアルコールは心をほぐしてストレス解消になるため、酸化ストレスを軽減させる効果はあります。しかし当然のことながら過度のアルコールは体に大きな負担をかけ、酸化ストレス状態を招きます。
アルコールは肝臓でアセトアルデヒドという有害物に代謝されます。このアセトアルデヒドは最終的に酢酸と水に分解されますが、多量の飲酒や分解速度によって体内に残ると、だるさや頭痛といった症状に繋がります。これが翌日まで続くものがいわゆる二日酔いです。
しかし、アセトアルデヒドを分解するアセトアルデヒド脱水素酵素の量は人によって異なります。つまり、この酵素が少ない人は、少量のアルコールでもアセトアルデヒドの影響を受けやすくなるため、とくにお酒が弱い人、二日酔いになりやすい人は酸化ストレスの観点からも無理な飲み方はやめ、自分の体と相談して適量を楽しみましょう。
参考: γ-GTPが高いとアルコールの飲み過ぎ?γ-GTPを下げる方法とは?(岐阜大学 抗酸化研究部門)
参考: お酒の一気飲みとゆっくり飲むのとでは、酸化ストレスはどちらが高い?(岐阜大学 抗酸化研究部門)
まとめ
酸化ストレス状態は脳疲労を招き、脳疲労になると酸化ストレスが高まる。この悪循環に陥ると脳はどんどん疲れてしまい、睡眠や味覚など人体のさまざまな部位に悪影響を及ぼします。
たとえばビジネスパーソンなら業務遂行が非効率的になりますし、学生なら学業に支障をきたします。悪循環を止めるには脳に休息を与えると同時に酸化ストレスの軽減も意識しましょう。
漠然と健康的な生活を心がけるのではなく、酸化ストレスや抗酸化について正しい知識を得て、日常生活に取り入れてみてください。