日本認知症予防学会とエビデンス創出委員会について

2021.03.23

現在、増加している認知症に対して様々な対策が取られています。

 

政府は厚生労働省から2015年に「新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)」を策定したり、2019年には「認知症施策推進大綱」し、増えていく認知症患者さんがより良い社会生活を送れるような社会にすること、そして「予防」の取り組みを政府一丸となって進めていくことが挙げられました。

 

国だけではなく大学や研究機関も認知症予防対策を行っています。その中の一つとして岐阜大学 科学研究基盤センター 共同研究講座 抗酸化研究部門で共同研究を行っている岡山大学の阿部康二教授が携わっている「日本認知症予防学会」について解説します。

 

日本認知症予防学会について

 

認知症予防について学識又は研究経験のある人で構成され、九州で設立された認知症予防に関連する諸分野の科学的研究の進歩発展をはかり、その成果の社会還元を目的とした学会です。

 

日本認知症予防学会が考えている認知症の広義の予防、

 

具体的には

第一次予防が認知症の発症予防

第二次予防が認知症の早期発見、早期治療、早期対応

第三次予防が認知症の進行予防

 

この3つの予防に取り組むことを目的とし、

認知症予防のためのエビデンス創出とそれに基づいた実践活動、認知症予防のための人材育成、多職種協働・地域連携を3本柱とし、さらに「認知症予防」の普及啓発も目指しています。

 

エビデンス創出委員会

 

日本認知症予防学会では認知症の予防に取り組んでいるのですが、予防のエビデンスは少ない状態でした。

 

エビデンスは言葉の通り、誰が見てもこれは確かであり、間違いないものであると分かることです。

ですから世の中には色々なサプリメントもあり、テレビや雑誌などで宣伝されています。しかし、必ず雑誌の下やテレビ画面の下に「これは個人的な感想です」と文言の記載があります。それではエビデンスではなく、「その人が言っている」ので万人が認める確かなものではないということです。

 

認知症予防学会は学術団体なため、個人的な感想をいくら集めても何の役にも立ちません。学術団体として確かなものを求めるのは学会の指名です。

 

そこで予防のエビデンスがあるものがなければ自分たちで作っていこうと考え、2017年にエビデンス創出委員会を作りました。そして認知症予防に効果がありそうなものがある場合には、学会に申込みしてもらい、それが審査の上で価値がありそうだと判断されたら学会としてエビデンスがあるか、ないか検証をしましょう。というシステムを作ったのです。

 

エビデンス創出審査結果

 

エビデンス創出委員会で審査された結果は6段階の認定グレード(特A,A,B,C,D,E)で判定し、申請者に通知され、学会ホームページでも公表をしています。

 

現在、グレードAの認定があるものとして、東海国立大学機構 岐阜大学 科学研究基盤センター 共同研究講座抗酸化研究部門で開発した抗酸剤のMCI患者に対する認知症予防効果、その他にも、音楽療法(楽器演奏)が認知正常者から認知障害への1次予防効果あるとしています。