未病対策としての漢方薬やサプリメント摂取はどう考えればよいか?
2019.11.02
病気になる前の対策をしっかりしましょう、ということで未病対策が進んでいます。健康長寿を意識している方の中には、漢方薬やサプリメントを既に利用していたり、今後利用しようと考えていらっしゃるかもしれません。
今回は、未病対策として、漢方薬や健康補助食品・サプリメント摂取の考え方と注意点をお話します。
漢方薬服用の考え方と注意
漢方薬というのは中国で始まったもので、基本的な考え方は“身体の不調や何か症状が出ている、病気がある”という場合に、その不調や症状に対して効果が期待できる漢方薬を処方します。
しかし、漢方薬を飲み始めてから2週間から1ヵ月ほど経過して症状が改善しない場合には、漢方薬の投与は打ち切ります。
日本では漢方薬は健康保険で認められおり、比較的安全な薬として扱われています。しかし、注意していただきたい点があります。
極端な例ですが、風邪の初期症状に効果が期待できる小柴胡湯(しょうさいことう)という漢方薬があります。これを何年も継続して服用した結果、肺線維症という肺が固くなってしまうという合併症で亡くなられたという方がかなりの数おられます。
この事例からもわかるように、実は漢方薬というのは、他の医薬品に要求されている「安全性試験」、「副作用試験」、「有効性試験」、この3つが全く行われていないということです。
これは、日本に漢方薬が導入されてきた時に、「古くから中国で使われている薬だからいいでしょう」という理由でこれらの安全性試験、副作用試験、有効性試験を実施せず、健康保険で処方できるものとして認めてしまったのです。
このような経緯から、1982年~2006年までの臨床医時代に、患者さんに自ら漢方薬を処方したことはありません。
漢方薬を服用する際に注意していただきたいのは、飲み始めて2週間~1ヵ月経っても症状が改善しない場合は、服用を止めて専門医に相談をすること、また、症状が改善する場合でも、個人で服用の継続を判断することなく、専門の医療機関などで相談をすることをおすすめします。
サプリメント服用の考え方と注意
次にサプリメントです。そもそもサプリメントとは、英語で「おまけ」や「付録」という意味の言葉です。
つまりサプリメントとは、基本的に食事で十分な栄養やカロリー、ビタミン、その他身体に必要な成分が摂れているのであれば必要ない、というのが基本的な考え方です。
逆に、食事で十分な栄養が摂れない、もしくは栄養状態が悪い人には、サプリメントは非常に効果があるものです。
しかし、サプリメントで効果確認やエビデンス(証拠)がきちんと取れているものは、あまり数が多くありません。
もし、サプリメントを販売している会社が「たくさん飲めば飲むほど、更によく効きます」という場合は、注意が必要です。
例えば、皆さんよくご存知の「ビタミンC」という成分があります。この「ビタミンC」には、美容や美白、酸化ストレスを下げるという効果があります。
このビタミンCの濃度と抗酸化力を測定する実験をしたところ、「ビタミンC」濃度を少量からどんどん増やしていくと、その濃度に比例してどんどん上がっていきます。しかし、ある1点のところでピークを迎えると、今度は逆に抗酸化力が下がってしまいました。
つまり、ビタミンCは一番効果が出るポイントというのが決まっているのです。それは、一般的な成人の方で、だいたい「1gをちょっと切るくらいの量」がビタミンCの抗酸化力が最も高くなる量といえます。
ですから、“ビタミンCが3000ミリグラム入っています”と謳っている商品などは抗酸化力を期待しても効果がないと考えられます。
サプリメントは、通常の食事で足りない栄養分を補充するという考えではありますが、きちんと効果を示すエビデンス(証拠)があり、一番効果がある量や成分などの情報がきちんと開示されているものを選んでいただくことをおすすめします。
最後に
健康長寿のために漢方薬やサプリメントを利用する際は、商品の宣伝文句や口コミなどを鵜吞みにせず、きちんと自分自身で効果のエビデンス(証拠)があるもの、また安全性などの情報がきちんと開示されているものを調べて選びましょう。また、少しでも不安があったらその販売会社に問い合わせをするようにしてください。
更に、服用して違和感を感じたり症状が改善しない場合は、専門の医療機関に相談をするようにしてください。